29 ふりかけ万歳
見過ごしがちな身近なもの
日本に生まれてフツーの生活をしていると当たり前なことなので、その素晴らしさに気付いていないことがよくある。
「ふりかけ」がその一つ。
ふりかけとは何か改めて説明する必要はなく、白いご飯に文字どおりふりかけるだけで、おかずなしでも美味しく食べられるのだが、よーく考えてみるとこれはスゴイことなのだ。
食パンにジャムやバターを塗るのと同じじゃないの、と言う人もいるかもしれないがそーではない。いくらジャムを塗ろうがバターを付けようが、食パンは食パンである。ジャムパンやバターパンになったりはしない。
それに対し、ご飯にふりかけを掛けると単なる「ご飯」が「ふりかけご飯」になるのだ。
みんな知っているように、ふりかけには○美屋の「の○たま」を始め、多種多彩なバリエーションがあって、当然のことだが何をふりかけるかによって味が変わってくる。
ちなみに、一般的にスーパーで売られている物で私が個人的に好きなのは、えーと、うーんといくつもあるのだが、あえて一つ選ぶとすると「旅行の友」である。これは、田中食品株式会社という広島のメーカーがなんと大正5年(1916年)に開発した由緒あるふりかけで、同社のサイトによると戦艦大和の戦闘配食としても採用されたという歴史のあるものなのだ。○美屋の「の○たま」の誕生が昭和35年(1960年)なので、それより44年も歴史が長い超ロングセラーのだ。
で、正直に言うと子どもの頃は、このふりかけがそんなに好きなわけではなかった。なぜそうだったかつらつら考えるに、当時、我が家のふりかけといえば殆ど「旅行の友」オンリーだったような気がするのだ。我が家は決して裕福な家庭ではない上に叔父や叔母が何人も同居する大所帯だったため、その頃、全国的レベルで爆発的人気の「の○たま」に比べてたぶん割安だった「旅行の友」が我が家の食卓選択肢のトップに君臨していたのだと思う。価格的なことは覚えていないが、量的には「旅行の友」が勝っていた記憶があるのだ。ま、ひょっとしたら単に食事作りを切り盛りしていた祖母の好みでチョイスされてだけかもしれないケド。
また、テレビで見る世間の人は「の○たま」なのにウチは大抵「旅行の友」だったことに何やら不満みたいな感情があって、小魚の粉由来の薫りと苦みが子どもだった私の味覚にちょっとだけ合わなかったのもある。
しかし、大人になって「の○たま」が子どもから大人まで万人受けする味付けなのに比べ、「旅行の友」は瀬戸内の小魚をメインにした深みのある大人の味であることに気づいた時、その素晴らしさに思わず頷いたのである。
一般的なスーパーでは購入できないふりかけの中に「旅行の友」と肩を並べる私好みの物があるが、それはまた別の機会に紹介するとして話を戻そう。ふりかけは現在、その選択肢が多岐にわたり、スーパーで購入するときもケッコー楽しめ、自分の好みのものを数種類手元に置いておくと、その時の微妙な気分の違いに対応した食べたいメニューを何の苦もなく手に入れることができるのだ。
当たり前とは言え、ただ「ふりかける」だけで調理完了となってしまうという、恐ろしく簡単でスピーディーな点も忘れてはいけない。ふりかけを知らないどこか他の国の人にとって、このことは実に驚くべきことなのだ。
所詮ふりかけご飯じゃぁないのと侮ってはいけないのだ。
「ふりかけ」のありがたみがよくわかるのは入院をした時。病気や怪我でただでさえ食欲が落ちている上に、決して美味しいとは言えない病院食のダブルパンチによって食べ物が喉を通らない時でも、ふりかけがあればなんとかご飯だけでも食べることができるもんです。
あなたも一度入院して、、、いや、ふりかけの良さを考えてみてはどう?
(2011.07.10作成)