12 マッハ
考えだすと眠れない
今回は知ったかぶりです。
「マッハ」という言葉を皆さんご存じと思いますが、岩波国語辞典によると「飛行機のような物体が空気中を進行する時の超音速の速さをはかる単位。マッハ1は音の速さと同じ。」つまり、音の伝わる早さを1とした単位ということです。
実際、空気中での音速は気温や気圧に左右されますが、大辞林によると「摂氏0度一気圧の時、毎秒331.5メートルで、温度が一度上がる毎に、毎秒約0.6メートルずつ増す。」だそうです。
メンドーなので、音速を秒速330メートルとしましょう。このスピードがマッハ1ということになって、時速にすると1時間は3,600秒だから、えーと、、、とにかくすんごい速度になります。
で、例えば飛行機がマッハ1で飛行するとどういうことになるかと言うと、飛行機自体が発生するエンジン音や機械音と風切音が同じスピードで飛行機に付いてきます。
だから、この飛行機に乗っていると10秒前に発生した音も1秒前の音も現在の音もが同時に聞こえる訳です。いわば、音が機体にまとわりついた状態になり、とてつもない振動となってしまうのです。「空気の壁」と呼ばれるやつです。
そのスピードを超えると、現在発生している音以外を後ろへ置き去りにできるので振動は収まります。
さて、ここで問題です。将来、マッハ1を越えるスピードで走行できるリニアモーターカーが完成されたとしましょう。ちょうどマッハ1で走って来るそれをその線路上で見ている場合、その走行音はどのような聞こえ方をするんでしょうか?
これはあくまでも理論上の話しですが、真っ直ぐな線路で3キロ先にリニアモーターカーが見えても、音と同じ速さで近づいているわけですから音は何も聞こえないはずです。2キロ先、1キロ先、500メートル、100メートル、10メートルでも同様です。0メートルになった瞬間に「ドン!」とか「ドカン!」ひょっとすると「バン!」かもしれませんが、とにかく爆発的な音がして、急速に去っていく音が通り過ぎた方向から聞こえ、来た方向からは何も聞こえない状態になると思います。
では、問題2。マッハ2で走行した場合はどうでしょう?
0メートル地点直前までは、マッハ1の時と同じで何も聞こえず、通り過ぎた方向からの音はマッハ1の時の半分の時間で急速に小さくなるはずです。
しかし、0メートル地点での爆発音はマッハ1の時より比較的小さいものになります。それは音を置き去りにして来ているから。その音の差分は、0メートル地点からリニアモーターカーが来た方向へ向かってあたかも逆に進んでいるように聞こえるはずです。既に走り去って何もないのに。
ゆっくり考えましょう。音速よりも早いスピードで走って来たので、2キロ先で発生した音が1キロ先で発生した音より先に聞こえるはずはないのです。だから、リニアモーターカーが来た方向からは、遠い所で発生した音ほど遅れて小さく聞こえるのです。
前述のとおり、知ったかぶりをしているので間違っているかもしれませんが、伊依粒はコレを考え出して眠れなかったことがあります。
そして、聡明な方はお気づきでしょうが、この2つの問題にはとても分かりやすい共通の答えがあります。
「リニアモーターカーに跳ね飛ばされて通過後の音を聞くことが出来ない。」
何しろ線路の上に立っているんですからねぇ。
(2003.1作成、2008.2加筆)