11 バス停

弄ばれるバス停

 
世の中には酒に酔うと色んなモノを持ち帰ってしまうという人がいて、例えば、結婚披露宴で酔っぱらってナイフやスプーン等を一式持ち帰ってしまった話なんがあるが、小生の知り合いには、昔「バス停」を持って帰った人がいる。
 
ある日、目が覚めると自分の部屋にバス停があったそうな。
 
コンクリートの土台が付いていて置いてあるだけとはいえ、あんな重いものをなぜ持ち帰ったのか本人も不明らしい。ま、酔っぱらったからなんでしょうけどね。
 
もちろん、バス停を持ち帰っても自分の家の前にバスが停まったりはしないし、猫バスが来たりも決してしない。
こっそり返したらしいが、こっそりとは返せなかったはず。
 
バス停といえば、小生のシゴト担当エリアには個人名が付いたバス停がある。
 
それは、綾田さん宅の前にある「綾田前」というバス停。
 
どうして個人名のバス停があるのかというと、綾田さんは元々、自宅敷地内で診療所か医院を開業していたのだ。昔から診療所や医院、病院の前にバス停があるのは普通のことなので「綾田病院前」というバス停であったのだが、ある日、病院部分の家屋を取り壊して、同じ町内ではあるが全く別の場所に規模拡大移転してしまったのだ。
 
困ったのはバス会社。暫くはそのままであったが、普通の住宅になった以上いつまでも「綾田病院前」という名称を使い続けるわけにはいかない。さりとて「旧綾田病院前」とか「綾田病院跡前」なんかにすると侘しい感じがしてよろしくない。結局「病院」だけを除けて「綾田前」になった。
 
でもこれ、名前が綾田さんだったからまだいいのである。
これが山後(やまうしろ)さんだったりすると「山後前」(やまうしろまえ)となって、バス停が山の後ろ側にあるのか前側にあるのか分かんなくなっちゃう。
 
そう考えると、本当は学校の裏側にあるのに「○○小学校前」という名前のバス停があったりするような気がしてくるなぁ。
 
 

(2008.1作成)